長い間のご愛顧… | 五月
長い間のご愛顧
まことにありがとうございました
厚く御礼申し上げます
五月店主
唐突にあった閉店張り紙です。達筆でいて簡潔です。
五月といいながら笹の葉があるのもポイントです。季節感を出しています。おそらくは伝えたいこともいっぱいあったでしょう。だけどあえてこらえて、「長い間のご愛顧」という一言に込めたのが、読ませどころです。
そっけないわけではありません。その証拠に赤い枠で囲ってあります。しかもフリーハンド。店主はどういう思いでこの線を描いたのでしょう。最後の一筆を終えた時の気持ちを考えると、こみ上げるものがあります。
お客様各位 | 平川風月堂祇園店
お客様各位
平川風月堂祇園店は、平成二十五年五月末を
もちまして休業させていただくこととなりました
長きに渡り皆様に御愛顧賜りましたことを
心より感謝申し上げます。
尚、本店は、平常通り営業致しますので
御愛顧賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
うどんミュージアムと同じく、休業の形をとった閉店張り紙です。
チェーン店の一つの店舗が店じまいしただけであり、企業が営業を停止したわけではありません。おそらく不動産として店舗は持ち続けるので、今後の景気の動向次第では同店を再開する可能性がなくはないのでしょう(実際はほぼないにしても)。未来に可能性を残した開放系閉店張り紙に分類できます。
1段落の一番最後にしか読点を打たない、句点は出来る限り使わない。無駄を削ぎ落した文章に、手際よく店を閉める経営哲学と通じる美学がかいま見えます。
お客様へ | 不明
お客様へ
3月10日をもって
閉店させて頂きます。
永らくの間、ご愛好頂き
ありがとうございました。
店主
あっさりした文章が逆に憂いを感じさせます。少し急ごしらえで作ったのか、10日のところが横書き用のまま、縦書きで出力しています。
加えて「閉店させて頂きます」と閉店日より前に書いたような文体。この著者は何を思いながら閉店日より前にこの文章を書いたのでしょうか。胸が締め付けられます。
閉店のお知らせ | 株式会社京阪ザ・ストア
閉店のお知らせ
いつもSECOND POCHE枚方市上りホーム店をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。
勝手ながら、当店は、9月28日(日)をもちまして閉店させていただきました。お客様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解賜りますようよろしくお願い申し上げます。
尚、新聞・雑誌・たばこ等の購入はアンスリー枚方中央口店・枚方東口店をご利用下さいませ。
株式会社京阪ザ・ストア
昨日と同じチェーン店の閉店張り紙。ほとんど字面が同じです。しかし自由度はあるようで、タイトルが違ったり、新聞・雑誌のほかたばこの購入についても書いてあったりと、その店の特徴が出ています。
しかもアンスリーの書き方がずいぶんと雑になりました。ロゴからカタカナへ。でもカタカナもロゴタイプっぽいので、もしかしたらアンスリー側の問題かな。真相の究明が待たれます。
お客様各位 | 株式会社京阪ザ・ストア
お客様各位
いつもSECOND POCHE三条店をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。
勝手ながら、当店は、3月14日(金)をもちまして閉店させていただきました。お客様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解賜りますようよろしくお願い申し上げます。
尚、新聞・雑誌の購入はAn-3三条店をご利用下さいませ。
株式会社京阪ザ・ストア
こちらもチェーン店の閉店張り紙。よく流通しているもののはずです。タイトルの箇所に宛名を入れるのは珍しい。
この閉店張り紙の文章では「閉店させていただく」という言い回しが気になります。お客の立場からすれば続けて欲しいはず。だからこそ自主的に閉店を選んだことをもっと潔く述べて欲しい。そう思います。
閉店張り紙を出しているSECOND POCHEは京阪ザ・ストア系列のキオスクで京阪系、一方今後の新聞・雑誌の購入先としておすすめしているAn-3は京阪・南海系のコンビニと似たような系列だけど少し違う。
閉店張り紙だけでも調べればずいぶんと社会勉強になる好例です。SECOND POCHEの字と枠線の色が同じなのも、矜持を感じさせます。